思い出
皆さん、今朝のお目覚めは如何ですか??悩んでいること、困っていることはありませんか??
さて、今日は過去の思い出話をしてみたいと思います。私が3年目の時、ちょうど手術室からICUへ異動になってまもなくのお話です。虫垂炎で救急搬送されて来た中年男性が、腹膜炎併発で緊急オペとなりました。
患者様の中で、時に、宗教上の問題による治療制約を持つ方がいらっしゃいますよね? この時の患者様は、かの有名な、オウム心理教の信者様でした。術後の痛み、辛さ、一切弱音を吐かず、ひたすら我慢をされます。まだ、自分では動けない時 期、不自由なはずなのに、ナースコールで看護師を呼ぶこともしません。口数も少なく、ただ、ひたすら、何かに耐えている・・・そんな感じでした。
まだ、当時は、今ほどに介護施設が充実していなくて、病院で高齢者の介護を担っているような時期でもありましたので、本当に急性期にある術後患者のケア を優先しないといけないにも関わらず、介護対象老人の身の回りの世話にてんてこまいで、本来の看護機能が十分に発揮されることがない時代でした。
オウム心理教の患者様のベッドサイドへは、積極的にスタッフ一丸となって訪床しました。回復はさすがにとても早く、ドレーンも抜け、術後の経過も良好で、食事が始まりました。
ところがです・・・。
いざ、食事が開始されても、召し上がらないではありませんか!おいしくない??食欲がない???
いえいえ、どうも、宗教上、「断食期間」に突入されたと言うのです。そして、もう、離床をしてどんどん動かないといけない時期になって、今度は歩くどころか、一日中、ベッドの上で座禅を組んで目を閉じておられるのです。瞑想??
これでは、回復に支障を来たすので、主治医と婦長が治療上の協力依頼を仰ぎに行かれました。患者様は、それに対し、理解と誠意を示して下さいました。が、宗教上の儀式と教えを実行することが、この方にとっての生き方全てである旨もきちんとお話して下さいました。
ぞくぞくと、面会には、白装束の方々がお見えにもなりました。でも、スタッフに対しても、他の患者様にも、丁寧で、気持ちの良い挨拶と爽やかな笑顔なのですよね。
結局、患者様は、一度は退院されたものの、一ヵ月後、まだ、腹膜炎を起こして救急搬送をされて来ました。この時は、既に手遅れで、命を落とされました・・・。
宗教観を優先させる事と、治療を優先させる事と、その兼ね合いの難しさに直面した症例でした。でも、我々には、強制力を持たないですのでね・・・。あれが、限界だった??